6.ツボ

ツボと感情のメカニズムとは

悲しみ・怒り・喜び・不安など、私たちの感情をコントロールしているのは「脳」です。ツボは、脳に働きかけるスイッチのようなもの。イライラした時や落ち込みが激しい時は、それぞれに効果のあるツボを押すことで、脳の働きを正常に保つことができます。

ツボが脳に作用するメカニズムは、以下の通りです。

ツボは体中にありますが、特に効果が大きいとされるのが、脳と密接につながっている手のツボです。手のツボは、電車の中や仕事・授業・育児中など、いつでも押せる気軽さも嬉しいポイントです。

鍼灸とセロトニン

ツボに適切な刺激を与えて心身のバランスを整える方法のひとつに「鍼灸(しんきゅう)」があります。
鍼灸によってツボを刺激すると血流が増加し、筋肉の緊張をほぐすほか、免疫を活性化させる効果が発生。また、モルヒネの様な働きをする脳内物質の分泌を促すため、鍼灸を施した部分に鎮痛効果が生まれます。
肩こりといった局所的な疲れや痛みを軽減することで知られている治療法です。

鍼灸の考えは東洋医学のひとつとして古くからアジア圏を中心に伝えられてきましたが、近年では心身に対するさまざまな効果が注目され、アメリカやヨーロッパなどにも浸透。
世界中で鍼灸のメカニズムを科学的に解明する研究が進められてきた結果、脳内のセロトニンやオキシトシンの分泌にも寄与することが明らかになってきました。

セロトニンの分泌を促す

詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、鍼灸でツボを刺激することで脳の前頭葉の活動や自律神経の働きに変化が起き、脳の下垂体で産生されるオキシトシンの分泌が促進されることが分かっています。それによってセロトニンも作られやすい状態となり、分泌が促されるのです。
鍼灸によるツボの刺激は直接的にセロトニンを増やす行為ではありませんが、オキシトシンの分泌を介して結果的にセロトニンが増えることにつながります。

鍼灸によるうつ症状の改善効果

イギリスでは、鍼灸治療は気軽にできる緩和ケアの方法としてポピュラーな存在になっており、街のあちらこちらに鍼灸クリニックが立ち並んでいます。そんな中、うつ病に対する鍼灸治療が注目されています。
薬物が合わない、効果を感じないことを理由にうつ治療をやめてしまうケースが問題となっていることを受け、ヨーク大学では鍼灸治療のうつに対する大規模な研究が行われました。
研究試験によると、うつ症状を患う人が鍼灸を受けて3ヶ月目以降から、うつ症状のスコア減少を確認。鍼灸後の脳の前頭葉部の血流が改善されていることから、脳活動が活発になり炎症を起こす物質を減らしたことが原因ではないかとされています。

イライラに効く手のツボ

育児や仕事、人間関係など、どうしてもイライラしてしまうこともありますよね。そんな時に気軽に押せる、イライラに効果的な手のツボをご紹介します。

合谷(ごうこく)

合谷は「万能のツボ」とも呼ばれているとおり、イライラを鎮めるだけでなく、頭痛・便秘・風邪のひき始め・腹痛・生理痛などにも効果的です。

場所:手の甲の人差し指と親指が交わる部分から、人差し指の方に少しだけ辿ったところ。
押し方:骨の裏側に指を入れ、押し上げるようにして押す。

労宮(ろうきゅう)

気持ちがゆったりするツボです。自分で押すのはもちろん、誰かに押してもらうとよりリラックス効果が高まります。

場所:手をぎゅっと握ったときに、中指と薬指が当たるあたり。手のひらの中央の少し上。
押し方:反対の手の親指で、人差し指側に向かって押し上げる。

不安に効くツボ

人付き合いや仕事などに不安を抱え、ネガティブな気持ちから抜け出せなくなってしまった時は、不安に効果的なツボを押してみましょう。

商陽(しょうよう)

ストレスを和らげる・胃腸の働きを良くする・疲労回復などに効果のあるツボです。

場所:人差し指の爪の付け根の、親指側。
押し方:痛くない程度にもみながら押す。

少商(しょうしょう)

過敏になった神経を抑えるほか、のどの痛みなど風邪の症状にも効果的なツボです。

場所:親指の爪の付け根の外側。
押し方:もみほぐすように。

自己流ツボ押しのリスク

いつでも気軽に実践できるため、普段の生活に取り入れやすいツボ押しですが、自己流でツボ押しをすることには少なからずリスクが存在します。
間違ったツボを押してしまったり力加減をあやまったりすると、かえって体調を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。

めまいや冷や汗を引き起こす

大きな血管や神経のある場所のツボを強く押しすぎると、めまいや冷や汗などの体調不良を引き起こしてしまうことがあります。場合によっては気分が悪くなることもあるため、十分な知識を備えた上でのツボ押しが大切です。
ツボを押したあとにしびれを感じる、瞬間的に体に力が入るような痛みを感じる場合にも、刺激する箇所が間違っていることがあります。

筋肉を傷つける

痛みのある部位やツボをつい強く揉んだり叩いたりしてしまう方がいますが、強く押しすぎると筋肉を傷つけてしまう可能性があります。筋肉が傷つくと筋肉が緊張して血液の流れが滞り、痛みが悪化してしまうことも。痛みのある部位やツボを強く揉む、叩くなどで刺激し過ぎないようにしましょう。

ツボ押しをしてはいけないとき

下記のような場合には、ツボ押しやマッサージは危険です。とくにツボ押しの知識がない人が無理に行うと、かえって炎症を引き起こしてしまうことがあります。

とくに痛みなどの症状を緩和したい場合は、自己流でのツボ押しは行わず、専門家の施術を受けるようにしましょう。

ツボ押しを熟知する専門家に相談する

ツボ押しによってリラックスする効果と、痛みを緩和する・症状を良くする効果は分けて考えることが大切です。施術者には神経や血管、筋肉といった全身に対する医学的な知識のもと、適度な力で刺激することが求められます。
心身のバランス調整やリラックスを目的にツボ押しをすることは自分でもできますが、体に悪い影響を及ぼさないよう細心の注意が必要です。
自己流だけに頼らず、専門的な知識のある治療院に相談しながら実践しましょう。