1.食べ物とセロトニン

このページでは、セロトニンを増やすために取り入れたい食べ物について紹介します。ここでのポイントは「トリプトファン」と呼ばれる成分を含む食べ物を取り入れること。これは、セロトニンを生成するためにはこのトリプトファンが必要であるため。トリプトファンは肉や魚、大豆、卵に多く含まれることがわかっていますが、ただ単に食べればいいというものではなく、調理方法についても注意する必要があります。
このように、本ページではセロトニンを増やすために取り入れたい食べ物について、そして調理方法の注意点や摂取量の目安、簡単にできるおすすめのレシピなどについて紹介しています。決して難しいものではなく、日々の食事に手軽にとりいれることができますので、ぜひ参考にしてみてください。

セロトニンを増やすには

「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを増やすためには、「トリプトファン」という成分を含んだ食べ物を摂ることが重要です。トリプトファンは必須アミノ酸のひとつですが、体内で生成することができないため、食事から摂取する必要があります。

トリプトファンは、日中は幸福感を与えるセロトニンに、夜にはそのセロトニンをもとにして睡眠へ導くメラトニンに脳内で変化します。そのため、トリプトファンを含んだ食事をしっかりとらないと、日中に気分が落ち込んだり、睡眠の質が低下したりする可能性が指摘されています。セロトニン不足を防ぐためには、まずは毎日の食事を見直すことが大切です。

また、日光にあたること・適度な運動を行うことでもセロトニンが活性化するとされており、デスクワークが多い現代社会はセロトニン不足になりやすい環境と言えるでしょう。

どのくらいの量を食べればいい?

1日あたりのトリプトファン摂取の目安量は、体重1kgあたりで4mg。体重60kgの人がトリプトファンを摂取したい場合、240mgが必要です。
トリプトファンが多く含まれている食品の含有量は以下のとおり(※可食部100gの値)。

大豆(全粒) 210~500mg
牛肉 260~380mg
魚(まぐろ類) 290~340mg
豚肉 220~300mg
160~240mg
チーズ 58~290mg

肉や魚、大豆、卵に多く含まれていることが分かりますが、調理法によってトリプトファンの含有量が変化します。
牛肉の場合、ゆでた状態がもっとも多く含まれており、生や焼いた状態だと減少。豚肉は焼くともっとも高く、ハムやソーセージに加工されると減少していきます。
大豆は調理前の乾燥状態がもっとも高く、ゆでると含有量が半分以下に。牛乳やチーズなどの乳製品にも多く含まれていますが、加工の仕方やチーズの種類で大きく差があります。

体重60kgの方が食事によってトリプトファンを摂取したい場合、表で挙げた食材を1日に100g程度食べれば補えますが、食材の加工や調理方法によっては、思っていたよりもトリプトファンを摂取できない場合があるので注意が必要です。

参照元:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365450.htm

3ヵ月は継続して摂取する

トリプトファンを多く含む食事を摂って、5~30分の日光浴やリズム運動をしても、セロトニンの活性が続くのは30分~2時間程度です。心理テストや採血での改善がみられるのも一時的で、セロトニンが時間とともに減少していくと、心身のバランスが安定している感覚が得られなくなってくるかもしれません。

体はセロトニンをストックしておけないので、毎日の食事や生活習慣を意識的に変えることが大切です。

セロトニンが活性化するような行動や食事を毎日継続していけば、少しずつセロトニンの分泌量が増えていき、本来の心とからだをとり戻すことにつながっていきます。

食事によってセロトニンが作られやすい環境づくりをしたい方は、トリプトファンを多く含む食材を3ヶ月以上食べ続けることを意識してみましょう。

トリプトファンが摂取できる食べ物

セロトニンに変化する「トリプトファン」が含まれた食べ物をご紹介します。手軽に食べられるものが多いので、ぜひ毎日の食卓に取り入れてみてください。

大豆製品

大豆そのものはもちろん、大豆を使った納豆・味噌・豆腐・醤油・油揚げなどの大豆製品にもトリプトファンが含まれています。食材だけでなく調味料にも含まれているので、味付けの際に気軽に摂取できるのが嬉しいポイント。昔から日本で食べられてきた大豆製品の良さを見直したいですね。

大豆製品を使ったセロトニンレシピ

凍り豆腐と水菜の白和え

大豆製品のなかでも、凍り豆腐はトリプトファンが多く含まれています。トリプトファンの吸収を高めてくれるのがビタミンB6です。ビタミンB6がたっぷり含まれているごまを使ったセロトニンレシピです。水菜にはビタミンCが含まれており、一緒に摂るとイライラを予防して精神安定に効果的。サラダ感覚でたくさん食べられる一品です。

1. 凍り豆腐をぬるま湯で戻し、水洗いしてから水気を絞ります。5mmほどの食べやすい大きさに細切りにしましょう。
2. 切った凍り豆腐と(A)を鍋に入れて、煮汁がなくなるまで弱火で煮ます。その後、布巾に包んで水気を絞ります。
3. 炒った白ごまをすり鉢に入れて、油が出るまでよくすりましょう。
4. 3と絞った豆腐、(B)を合わせてすり合わせます。
5. 4へ2~3cmに切った水菜を入れ、銀杏を加えて和えたら完成です。

肉類

お肉にもトリプトファンが含まれています。特に含有量が多いのが、豚ヒレ肉と鶏むね肉。どちらも低カロリーで脂身の少ないお肉なので、ダイエット中の方にも嬉しい食材です。
ただ、動物性たんぱく質に含まれている「BCAA」という成分が、トリプトファンの取り込みを阻害するとされています。トリプトファンを効率よく摂取するためには、トリプトファンの合成を促進する炭水化物(ごはん・パン・麺類・芋類など)と一緒に食べるのがベターです。
「毎日お肉を調理するのは面倒くさい……」という方は、まとめて調理して冷凍保存したり、むね肉を使ったサラダチキンをストックしたりしておけば、いつでも手軽に食べられます。

肉類を使ったセロトニンレシピ

ローストビーフのバターグレービーソースがけ

どんな調理法でも美味しい牛肉。ここでは、簡単で美味しいローストビーフの作り方をご紹介します。牛肉にはトリプトファンが含まれており、セロトニンの生成を助けるはたらきがあります。セロトニンが自律神経にはたらきかけて、リラックスした気持ちにさせ、落ち込んだ気持ちを切り替えてくれるでしょう。トリプトファンが豊富に含まれるバターを使ったソースなら、より効率よくトリプトファンを摂取できますよ。

1. 牛肉に(A)をすりつけながらまぶします。
2. フライパンで、油を敷かずに表面全体を焼きます。
3. 2を取り出し、アルミホイルに包んでからフライパンへ戻します。
フライパンに蓋をして、じっくり13分かけて焼きます。
ときどき蓋をあけ、ホイルを転がしながら焼くと熱が均一に入ります。
4. フライパンから取り出し、ホイルで包んだまま約10分ねかせます。
5. 肉汁を集めたフライパンにバターを溶かし、(B)を加えて軽く煮ます。
好みでニンニクのすりおろしを加えるのもおすすめです。
6. ねかせていた肉を薄切りにし、ソースを回しかければ完成。

魚類

魚類の中でも特にマグロやカツオなど、赤身の魚に豊富にトリプトファンが含まれています。他にもサケ・イワシ・サンマ・サバなどさまざまな魚に含まれているため、鮮度や味の良い旬のものを選んで食べるといいでしょう。

魚類を使ったセロトニンレシピ

サーモンの蒸し煮

トリプトファンが豊富なサーモンを使ったレシピです。蒸し煮にすることで鮭のうまみが凝縮され、栄養もたっぷり吸収できます。
トリプトファンがたっぷり含まれているクリームチーズを使ったソースで、効率的に摂取しましょう。ここでは、蒸し器を使わずフライパンひとつで簡単に作る方法をご紹介します。

1. こしょうを両面にまぶした塩鮭をフライパンに入れて、中火で両面を焼きます。
2. 日本酒を加えてフライパンに蓋をし、蒸し焼きにします。
3. (A)を混ぜてソースを作ります。牛乳を少しずつチーズに加えると、ダマになりにくくおすすめです。
4. 蒸し焼きにした鮭をお皿に移し、3のソースをかけます。好みでバジルやハーブをふりかければ完成です。

安価で冷蔵庫にストックしておける便利な食材「卵」には、トリプトファンだけでなく、ビタミンCを除く全ての栄養素が含まれていると言われています。忙しい方はゆで卵をまとめて作っておいて、いつでも食べられるようにするといいでしょう。
また、鶏の卵だけでなく、スジコやタラコなどの魚卵にもトリプトファンは含まれています。

卵を使ったセロトニンレシピ

そばのカルボナーラ

生クリームやチーズの乳製品には、トリプトファンが豊富に含まれています。トリプトファンはそばにも含まれているので、組み合わせることでより効率的に摂取できるでしょう。
カルボナーラに欠かせない卵やベーコンにもトリプトファンがたっぷり。さらに、卵黄に含まれるビタミンB12は、脳機能の正常な働きにもかかわるとされています。体内のセロトニンを高める食材の黄金レシピと言っても過言ではありません。

1. ベーコンを食べやすい7~8mm幅に切り、フライパンで炒めておきます。
2. ボウルに卵黄を入れて混ぜ、生クリームとパルメザンチーズ、塩を加えてよく混ぜ合わせます。
3. 2に1のベーコンを加えます。
4. 茹でて水気を切ったそばに3を加えて器に盛り、黒こしょうをふって完成です。

乳製品

牛乳・チーズ・バター・ヨーグルトなどの乳製品でもトリプトファンを摂取できます。おやつや朝食にヨーグルトを食べたり、牛乳を飲んだりするといいでしょう。
また、乳製品にはカルシウムが豊富に含まれています。カルシウムには交感神経の働きを抑え、イライラした気持ちを落ち着かせる作用もあります。乳製品は、リラックスしたい時にもぜひ取り入れたい食材です。

乳製品を使ったセロトニンレシピ

白菜のとろとろクラムチャウダー

牛乳や豚肉には、セロトニンのもととなるトリプトファンが多く含まれています。ひき肉の代わりにベーコンやハムを代用するのもおすすめです。
また、あさりにはカルシウムやカリウム、亜鉛、鉄などのミネラルが豊富です。牛乳に含まれるたんぱく質が、カルシウムや鉄分の吸収を助けてくれるでしょう。さらに、あさりにはビタミンB12もたっぷり入っており、脳機能の正常な働きを促します。
ビタミンCが含まれる白菜を一緒に摂って、イライラや不安な気持ちも防ぎましょう。

1. 白菜の芯は繊維を断ち切るように、横に細切りにします。
葉の部分はざく切りでもOKです。
2. 鍋で豚ひき肉を炒め、白菜の芯、葉の順に加えて炒めます。
3. 小麦粉を加えてさらに炒め、白菜がしんなりしてきたら、コンソメと水、あさりを缶の汁ごと加えて混ぜます。
4. 3が沸騰したら弱火にして牛乳を加えましょう。
5. 加熱しながら混ぜ、煮立ってきたら塩とこしょうで味を調え、青ネギを加えて完成です。

バナナ

バナナにはトリプトファンのほか、お肌の健康をサポートするビタミンB群や炭水化物も含まれており、セロトニンの材料がすべて揃っています。夏バテや熱中症にも効果的と言われているため、特に夏場は常にキッチンに置いておきたい食材です。

調理の必要がなく、皮を剥くだけで食べられるのも嬉しいポイント。同じくトリプトファンが豊富な牛乳と一緒に食べるものおすすめです。

バナナを使ったセロトニンレシピ

バナナとココアの豆乳ジュース

ミキサーを使わず簡単にできるジュースです。主役のバナナにはトリプトファンが豊富に含まれている上、セロトニンを作る上で必要なビタミンB6も豊富です。さらに大豆からできた豆乳を使うことで、トリプトファンの摂取量を高められるでしょう。
さらに、ココアに含まれるカカオポリフェノールには、精神的なストレス反応を抑制して改善する効果が報告されています。3つを組み合わせて飲むことで、ストレス解消につながるかもしれません。甘いものが好きならハチミツを加えてみる、甘すぎないジュースにしたい方は、シナモンを混ぜてスパイシーに仕上げてみるのもおすすめです。

1. ビニール(ポリ)袋にバナナと水、ココアを入れて、果肉の形がくずれる位までもみます。
2. 1の袋を斜めにカットして、グラスに中身をしぼり出します。
3. グラスに豆乳を注いで混ぜたら完成です。お好みではちみつやシナモンを加えて味を調節してください。

ビタミンB6も必要

トリプトファンと一緒にビタミンB6を摂ることで、より効率よくセロトニンが生成されると言われています。ビタミンB6を多く含む食材は、ブロッコリー・サバ・バナナ・玄米・レバー・鰹やマグロの赤身などです。
中でも特におすすめの食材がバナナです。バナナにはトリプトファンのほか、トリプトファンの合成を促す炭水化物・ビタミンB6も含まれています。気分が落ち込んだりイライラしたりした時は、バナナを一本食べてみましょう。ただし、バナナは少しカロリーが高いので、朝やお昼に食べるのがおすすめです。

ご紹介したように、セロトニンの材料はさまざまな食材に含まれています。そして一緒にビタミンB6を含む食べ物を摂るのがポイントです。偏った食事をとるのではなく、主食・主菜・副菜のバランスが整った食事を意識すれば、自然とセロトニンの生成を促すことができるでしょう。

炭水化物も重要です

ビタミンB6とともに必要になるのが炭水化物です。トリプトファンからセロトニンを合成するために必須のエネルギー源となります。炭水化物を含む食材として挙がるのは、イモ類・ご飯・パンなどです。
炭水化物ダイエットをやりすぎると、セロトニンが減ってしまうので注意しましょう。